12月、株式投資やFXをしていると気になってくるのが確定申告。長年投資をしている方は税制には詳しい人も多いです。
しかし、まだ投資始めたばかりなんだよ!って方の最初の関門はもしかしたらこの確定申告かもしれませんね。
・確定申告はしないといけないのか?でも、確定申告不要の制度もあるみたい。
・どれくらい税金ってかかるんだろう。
税金に関する疑問は絶えませんね。
私自身、株式投資を9年、FXを1年やってきて、利益がある年も損失がある年も経験しながら毎年確定申告をしています。
そこで、こちらの記事では元税務署職員というキャリアも活かし、トラリピFXに特化して確定申告すべき人、しなくていい人、さらに確定申告を先送りすることのメリット・デメリットを紹介しています。
今年のトラリピの確定利益に対して、どう臨むべきか自分の状況に合わせて判断できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
- トラリピFXをしていて誰が確定申告が必要になるのか
- トラリピFXで税金を先送りにする方法
この記事を書いている人

- メインは代用有価証券FX×ETF積立で1,400万円運用
- 積立NISA、iDeCo、暗号資産積立など分散投資
- 元税務署職員/FP2級
- 30代夫婦・2人の子ども/持ち家ローン有り
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確定申告すべき人
まず確認しておくべきは、確定申告すべき人はどんな人かです。

えー、しないでいい人を知りたいだけなんだけど!!



人によって得ている収入はさまざまです。
まずは確定申告すべき人を紹介しておかないと、解説に誤りが生じてしまいますので、押さえておきます。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
- 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
- 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
- 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人



読む気にならないんだけど。



会社員の方などで該当者が多いのは2番や3番です。
2番、3番を少しかみ砕くと、次のようになります。
(1か所目の職場での給与について年末調整されていることを前提とすれば)
「それ以外の職場の給与収入」と「給与所得及び退職所得以外の所得」との合計が20万円を超える場合に確定申告が必要
「給与収入」の増減は自分でどうこうするのが難しい部分と思います。
そこで、「給与所得及び退職所得以外の所得」(=今回で言うと、トラリピFXの利益など)を調整することで確定申告の要否が変わってきます。
収入と所得の違いについて
自営業などで例えると分かりやすいです。
(パン屋を経営している場合)
- 事業収入=「パンの売上」
- 事業所得=「パンの売上」から「パンを作るのに必要な経費(小麦粉の購入費用や従業員の人件費など)」を引いたもの
(給与をもらっている人の場合)
- 給与収入=「給料の総支給」
- 給与所得=「給料の総支給(=パンの売上)」から「決まった式で計算される給与所得控除(=パンを作るのに必要な経費)」を引いたもの
(FXをしている人の場合)
- 雑収入=「確定利益から確定損失を引いたもの」
- 雑所得=「確定利益から確定損失を引いたもの」から「FX専用で用意したPCや本など」を引いたもの
もちろんギチギチに解説するともっと細かいことがありますが、大まかに上の理解でいいかと思います。
これだとまだまだ理解が難しいと思うので、次から少し深堀りして解説します。
トラリピFXをしている人の確定申告
トラリピFXをしている人について確定申告をすべきか見ていきます。
こちらの記事を見ている方はおそらくFXでトラリピをしている方が大半だと思いますが、念のため。トラリピについては次の記事で紹介しています。



FXの収入は分離課税所得のうちの雑所得に該当します。



分離課税?雑所得?
ざっくり言うと、1月1日から12月31日の儲かった金額(利益確定した金額)から損した金額(損失確定した金額)を差し引けば、FXの所得になります。
正確に言うと、FX専用で購入したPCなども必要経費として差し引くことができます。
保有しているポジションやスワップの含み損益は所得に影響ありません。
トラリピFXの所得=利益確定した金額-損失確定した金額-必要経費



結局給与だけもらっていて、トラリピFXをしていたら、確定申告がいるのはどういう条件になるの?



給与を1か所からもらっているのか、2か所以上からもらっているのかによって少し異なります。
(1か所から給与をもらっている人の場合)
他の所得がなければ、トラリピFXの所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
例えば
- 給与収入500万円、トラリピFXの所得22万円→確定申告が必要
- 給与収入500万円、トラリピFXの所得18万円→確定申告が不要
(2か所以上から給与をもらっている人の場合)
他の所得がなければ、1か所目以外の給与収入とトラリピFXの所得との合計が20万円を超えると確定申告が必要です。
例えば
- 1か所目の給与収入300万円、2か所目の給与収入12万円、トラリピFXの所得10万円→確定申告が必要
- 1か所目の給与収入300万円、2か所目の給与収入12万円、トラリピFXの所得5万円→確定申告が不要



トラリピFXで調整して、確定申告をしないでいいようにできるって聞いたことあるんだけど。



トラリピFXの所得を調整して、(2か所以上の給与収入がある人はそれも足した上で)20万円以下にすることで、確定申告不要を選択することが可能だよ。
トラリピFXをしている場合、トラップを敷いて、ポジションを持って、一定のレートが来たら利益確定するという取引方法なので、利益確定を調整することはあまり考えないですね。
調整するのは、次の2つの方法が簡単です。
- 含み損があるポジションを決済して、再度ポジションを現在レートで持ち直す。
- 保有ポジションのマイナススワップを振替する。
これらの方法については、次の章で紹介していきます。
(補足)
代用有価証券FXであってもFXでの利益はこれまでの解説のとおりです。
しかし、代用している株式の利益は、上場株式等に係る譲渡所得や上場株式等の配当等に該当し、計算が異なりますので注意してください。
代用有価証券FXを知らないよって方、代用有価証券FXは株式を活用してFXができ、通常の株式投資と同じく値上がり益、配当、株主優待を受け取ることができるのでおすすめです。詳しくは次の記事で紹介しています。
トラリピFXで確定申告をしない場合のメリット・デメリット
突然ですが、トラリピFXの所得を調整して確定申告をしないようにした場合の特徴は何でしょうか。



そりゃあ面倒な手続きをしなくていいってことでしょ!



もちろんそれもあるけど、もうひとつ大きな特徴があります。
- 確定申告する手間がなくなる。
- 今年発生するはずの税金を払わなくていい。(税金の支払いの先送りができる。)



2つ目のやつ気になるわい!
トラリピ(FX)の税金
トラリピに限らずFXの所得は、分離課税の雑所得です。
分離課税と言うのは、事業収入、給与収入、年金収入など(総合課税所得)とは別に計算すること。
FXの所得の場合、各FX会社での利益や損失を全て相殺した所得に対して、20%を掛けた金額が税金(所得税のみ、住民税は別)となります。



FXの所得が30万円あれば、確定申告すると6万円(30万円×20%)の所得税が発生するということね。
想像以上に取られるのね。



だけど、最初に紹介した確定申告をすべき人に該当しなければ、このFXの所得を申告しなくていいので、この利益の税金を払う必要がなくなります。



なぬっっ!?ぬなっっ!?
例えば、確定利益が30万円ある状態で、含み損を12万円決済すると、確定利益は18万円となります。
本来、確定申告をすれば18万円×20%=3.6万円の所得税が発生します。



しかし、給与収入と退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人に該当しなければ、確定申告不要を選択でき、この税金を払う必要がなくなります。



とってもお得じゃない!
しかも、所得や所得税は、住民税、社会保険料、保育料の算出の基礎となる場合が多く、それらにも影響してくるため、申告不要を選択できる場合の恩恵は大きいです。
ただし、最初に紹介した確定申告をすべき人に該当すれば確定申告しなければなりません。他の所得がないか十分確認が必要です。
税金の支払いの先送りができる
では、どのように所得を20万円以下に抑えるかですが、トラリピFXをしている場合に次の2つが考えられます。
- 含み損のポジションを決済し、現在レートでポジションを持ち直す。
- マイナススワップを振替する。
1について具体例で考えていきましょう。
ここまでの確定利益=30万円
ドル/円現在レート=130円
ドル/円の売りポジションを次のとおり持っているとします。
現在ポジション(含み損) |
129ドル(△10,000円) |
128ドル(△20,000円) |
127ドル(△30,000円) |
126ドル(△40,000円) |
125ドル(△50,000円) |
ここから下3つのポジションの含み損12万円を決済し、現在レートで再度売りポジションをとります。
現在ポジション(含み損) | 対応 | 決済後、ポジション持ち直し |
129ドル(△10,000円) | そのまま | 129ドル(△10,000円) |
128ドル(△20,000円) | そのまま | 128ドル(△20,000円) |
127ドル(△30,000円) | 決済し、ポジション持ち直し | 130ドル(含み損なし) |
126ドル(△40,000円) | 決済し、ポジション持ち直し | 130ドル(含み損なし) |
125ドル(△50,000円) | 決済し、ポジション持ち直し | 130ドル(含み損なし) |



含み損を決済しない場合と決済した場合の、その年の所得税は次のようになります。
決済しない場合 | 決済した場合 | |
確定利益 | 30万円 | 18万円(20万円以下) |
税金 | 6万円 | 0円(確定申告不要) |



6万円の所得税を払わなくてよくなったね。
さらに、年が明けて、ドル/円レートが124円まで下がった場合を見てみましょう。
ポジション | 決済注文 | 確定利益 |
129ドル | 128ドル | 10,000円 |
128ドル | 127ドル | 10,000円 |
127ドル | 126ドル | 10,000円 |
126ドル | 125ドル | 10,000円 |
125ドル | 124ドル | 10,000円 |
合計 | 50,000円 |
ポジション | 決済注文 | 確定利益 |
129ドル | 128ドル | 10,000円 |
128ドル | 127ドル | 10,000円 |
130ドル | 126ドル | 40,000円 |
130ドル | 125ドル | 50,000円 |
130ドル | 124ドル | 60,000円 |
合計 | 170,000円 |



含み損を決済していなかった場合と決済していた場合の確定利益は次のようになります。
決済していなかった場合 | 決済していた場合 | |
昨年確定利益 | 30万円 | 18万円 |
今年確定利益 | 5万円 | 17万円 |
合計 | 35万円 | 35万円 |



最終的には、確定利益を今年で計上するか、来年で計上するかだけの違いね!



トラリピを今後も続ける人にとっては、トータルの確定利益は変わらず、今年分の確定申告をする必要がなくなり、税金を払わなくていいということになります。



でも、今年分の確定申告をする必要がなくなっても、来年以降の確定利益が増えて税金も増えるんじゃないの?



グッジョブ!
これが税金の支払いの先送りができるってことで、最終的には確定利益を残した年で税金の支払いをしないといけません。
確定申告を先送りにしただけのことであって、これがメリットなのかどうか実は人によって考えが分かれるところです。
今年の税金を先送りにすることよって、その分の現金を軍資金にして複利効果を上げることができるという考えであればメリットになります。
逆に、含み損を決済して現金を減らしているから、複利効果が下がるという考えであればデメリットにもなり得ます。



え、結局あんまり意味ないじゃない。



今回の記事で学んでほしいことは別にあるんだ。
トラリピで確定申告の有無を調整する本当の意味
実は、単純に「税金の先送りができる」ことがいいことではありません。
一番大事なことはこれです。
税金の支払いは、工夫すれば時期を調整できる。



相変わらず難しいこというのね。よく分からないんですけど。



トラリピの含み損ポジションを持ち直すことや、マイナススワップを振替することは、その年の確定利益を圧縮して、来年以降に利益を先延ばしすることと同義だったね。
つまり、今年分の利益(=所得)や税金(=所得税や住民税)を減らしたいときに有効です。
所得や税金は、社会保険料や保育料、児童手当やすまい給付金の基礎となっています。



例えば、もう少し税金を少なくしておけば保育料のランクが一つ下がる!なんて時にはかなり有効です。
逆に、今年分の利益や税金を上げたい(=来年以降を下げたい)ときには、プラススワップの振替や、トラリピのポジションを両建てして利益確定を増やすなどの方法が可能です。



例えば、住宅ローン控除があって減税額が余っている、ふるさと納税を今年はいっぱいしてしまった!なんて状況では今年の利益を上げておくのもいいですね。
また、税金の支払いを調整するタイミングで不要なポジションを損切りし、トラリピの運用設定を見直すという選択もあります。トラリピの損切りについては次の記事で紹介しています。
まとめ
今回の内容をまとめます。



給与収入のみでトラリピFXをしている人で確定申告が必要なのは次の条件だったね。
(1か所から給与をもらっている人)
他の所得がなければ、トラリピFXの所得が20万円を超える場合
(2か所以上から給与をもらっている人)
他の所得がなければ、1か所目以外の給与収入とトラリピFXの所得との合計が20万円を超える場合



ここで、トラリピFXで所得を調整する方法は次の2つでした。
- 含み損のポジションを決済し、現在レートでポジションを持ち直す。
- マイナススワップを振替する。
一番お伝えしたかったことは、トラリピFXをしている場合に「税金の支払い時期、実はある程度調整できる」ということです。
誰かがやっているからした方がいいんだ!そんな安易な考えではなく、自分自身の状況に合わせて利益を出す時期を調整することが大事です。少しでもみなさんの参考になれば幸いです。
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